コモンウェルス・ゲーム Commonwealth Games

 コモンウェルス・ゲームと言っても日本では馴染みが薄いですが、英連邦に属する国や植民地が参加して4年毎に行われるアジア大会みたいなものです。

 日本で報道されたかどうかは知りませんが、それが1994年8月中旬にカナダで開催されました。60近いチームが参加しましたが、オーストラリアももちろんその中の一つです(ちなみにオーストラリアはアジア大会のメンパーではない)。今時エリザベス女王がカナダまで出かけて開会宣言をするあたり、いささか時代錯誤の感もありますが、まあ今では同窓会のようなものと言った方がいいでしょう。

 南アフリカが久方振りに出場を認められたり、香港にとっては最後の大会だったりと、良し悪しは別にして過去にイギリスが何処で何をして来たかを見るにはいい機会とも言えます。参加チームの内独立国で旗の中に未だにユニオンジャックを残しているのは3ヶ国だけだったそうで、植民地などの旗と並んでたてられただけに、恥ずかしく感じたオーストラリア人も多かったようです。

 成績はオーストラリアが地元カナダを差し置いて、圧倒的な強さで金メダル・ラッシュでした。先進国からの参加はオーストラリア、ニュージーランド、イギリス、カナダだけだし、この大会が世界レベルかどうかという点は疑問です。移民の国オーストラリアを反映して重量挙げでは東欧からの移民がメダルを取ったり、また新体操?では日本人移民が金メダルを5種目(そんなにあるの?)で取ったりもしています。日本ももう少し他人種に寛容になってもらいたいものです。

 今回特徴的だったのは、例えば開会や閉会のパフォーマンスにカナダ・インデアンが登場したり、オーストラリアのアポリジニーのダンス・グループが出たりと、植民地化以来虐げられて来た原住民族への認識が高まっている事です。またカナダにはフランス系が多数を占め、独立運動も盛んなケベック州がありますが、エリザベス女王もフランス語でケベック出身の選手と話すなど、結構配慮を見せていました。

 でも一番話題になったのはアポリジニーのランナー、キャシー・フリーマンが女子400mで優勝した時です。アポリジニーが大きな大会で金メダルを取ったのは初めてだそうです。

 彼女はウイニング・ランの時かねて用意してあったアポリジニーの旗をオーストラリア国旗と一緒に掲げて走りました。このシーンはオーストラリア国内でも結構感動を呼んだようですが、他方白人保守派を刺激したようで、オーストラリア・チームの役員代表は彼女に対し国旗以外を使うなと厳重注意しました。

 この代表は以前にも障害者差別発言を行なうなど(障害者の競技もある)、評判を落とした人物です。この措置に対しオーストラリアのマスコミは一斉に反発、ラジオのアナウンサー等も揃って怒りまくっていました。政治家も首相を初め多くは措置に対し批判的で、この役員代表の地位も今大会までの運命のようです。

 野党のリーダーは当初アポリジニーの旗を掲げた事に対し、「良い事だ」とコメントしましたが、党内保守派からの突き上げがあったらしく後に「理解する」に変更し、最近落目の評判を一層落としたようです。さて当のキャシーですがプレッシャーにも負けず200mでも優勝し、厳重注意を無視して再びアポリジニーの旗とオーストラリア国旗を掲げてウイニング・ランをし、多くの人の快哉を浴びました。