何度も書いていますが、オーストラリアのいいところは、複数の文化が共存している事、つまり Multiculturalism です。3月12日に メルボルン市の祭り moonba がありパレードが行われました。その中にもマケドニアの民族舞踊があったり。ベトナムの獅子舞があったり。ポリネシアン・ダンスがあるかと思えば太ったおばさんが体を動かしているだけのようにも思えるトンガのグループもあり。ピザ屋さんはイタリアの民族衣装で参加し、ビール会社は古風な6頭だての馬車に樽をいっぱい積んで来たり。なかなか面白いものでした。
しかしMulticulturalismも常に良いとは限らず、時折問題も起きています。その一つがバルカンです。
NATOが爆撃を発表した時にはセルビア人グループが反対のデモをしました。最近ではマケドニアをオーストラリア政府が承認したのに対し、ギリシャ人が反発し、一部の過激派がマケドニアの教会やマケドニア人の商店に放火投石し、またマケドニア人がこれに報復するという事態が起こりました。
死傷者が出る状況にはありませんが、なにしろメルボルンはアテネ、テサロニケに継ぐ世界で3番目に大きなギリシャ人の街でもあります。ですから、一つ間違うと深刻な事になります。政府はどちらかと言うと数でまさるギリシャ系の影響を受けやすく、公平に事に当たっているようには思えません。ギリシャ人代表との話合いの後政府はマケドニア人のことをスラブ・マケドニアンと呼ぶと決定しました。でも、マケドニア(これもまた多民族国家)の多くはスラブ系ではないので非常に不正確な表現のようです。
もちろんマケドニア人は怒り狂っています。この問題に関しては世間はマケドニアに同情的なようで、国有ラジオは政府決定に反し、スラブ・マケドニアと言う表現は使わないと発表しました。
先日アデレードにある組織犯罪を調査取締まっている機関にプラスチック爆弾を仕込んだ手紙が送られ、捜査官が一人殺されました。これはどうやらイタリア系マフィアの犯行と見られています。
今欧米で問題になっているネオナチも存在します。家から一番近い商店街のブラウンズウィックも実をいうとネオナチのいる場所です。この連中は「オーストラリアはオーストラリア人のものだ。」「オーストラリアはアジアではない」と主張しアジアからの移民受入れに反対しています。
一体この移民の国で彼らが言うオーストラリア人とは誰の事だろう?とかスキンヘッドが彼らの言う伝統文化なのだろうか?と言う疑問はさておき、このグループがある土曜日にデモをしました。が、反ナチ・グループに包囲され、警官に保護されて安全なところまで誘導されるという有様で、オーストラリア人の大部分は健全である事を示しました。ちなみに集まったネオ・ナチ30人弱に対し反ナチ側は1000人、割って入った警官は100人いたそうです。
さて、この国の Multiculturalism はどこへ行きつくのでしょうか。
(この文章はボスニア紛争当時のものです)